記憶が保てるように

主に舞台や本、映画などエンタメと日常の話

最近読んだ本/2021.4

 

BEASTARS(22)/板垣巴留

最後までよかった。完結さみしい~。お約束展開をもう一回転裏返すようなシーンがたくさんあっていたぱる先生らしい。先生からキャラクターたちへ宛てた直筆メッセージでたまらず泣いた。いたぱる先生作品を見ていると、なんて混じり気のない才能の原液……と思う(もちろん色々な作品の影響を受けているのだろうけど、他作品・他作家を思い浮かべる以前にまず板垣巴留(毛筆書体)を感じる)。ダイナミックな筆致、臨場感溢れる構図・コマ使い、心理洞察、言語表現、エンタメ性の強いストーリー構成etc多方に魅力があるけれど、やっぱり『BEASTARS』はなんといっても“ドライブ感”かな〜!!楽曲のサビだけ繋いで展開していくような唯一無二の漫画。笑

メインキャラ複数(一番真っ当な俺/私がこの場をなんとかしないと…!)読者(こいつが一番狂ってやがる……!) こんな子たちばかりで愛おしい。レゴシとルイ、レゴシとハル、ルイとジュノ、ルイとイブキ、レゴシとジャック、ルイとハル、好きなペアを考えるときりがない。劣等感と憧憬のないまぜになったコンプレックスだらけの動物関係が最高だ。またこの世界に戻ってきてくれることもありそうなので、知ってる子たちに再会できるのを楽しみにしています。

 

素敵な彼氏/河原和音(14)
素敵な彼氏 14 (マーガレットコミックスDIGITAL)
 

こちらも少し前に完結。人に話すときによく『ハイキュー!!』の日向みたいな女の子が主人公で黒尾鉄朗みたいな彼氏がいる」って言ってた(笑)。 大人になってから、こういうストレートな恋愛青春漫画を読んだのは初めてな気がするけど、ずーっと元気をもらえてたし癒しだった。珍しく声が出るくらい笑ったりもした。高校生かわいいよう。青春恋愛ものの良いところは人が死なないところ! シリアスな少年漫画で情緒が乱れたオタクにはぜひお薦めしたい。

 

 BANANA FISH ANOTHER STORY/吉田秋生
BANANA FISH ANOTHER STORY (1) (小学館文庫)

BANANA FISH ANOTHER STORY (1) (小学館文庫)

  • 作者:吉田 秋生
  • 発売日: 1997/11/17
  • メディア: 文庫
 

友達と『光の庭』の話になって、そういえば番外編は未読だったなと思い。英二の変化に感じる年月の重みがずっしりとくる。時間経過を美化しないところに好感。ブランカが好きなので、アッシュとの出会いが読めてうれしかったな。主人公二人があとがきに出てきてくれるのがこんなにうれしいことってある?笑 

 

チェンソーマン(9)〜(11)

公安編完結〜!終盤は「こんな地獄、見たことない!!涙」という展開が何重にもたたみかけるもんだから、感情の鍋が沸騰した。鋭利な感性とそれに応える筆力がすごい、藤本先生。血祭りにしては美しすぎるんだよな。自分自身はグロ、ディストピアを望まない読者なので読んでいて大ダメージを受けるところがあり、この後の高校編は少し様子見しようかなというところです。あとアニメも楽しみですね。チェは漫画的に映える手法が多分に使われている作品だと思うので、映像でどうなるか。(MAPPAは呪映画に進撃最終クールに、まじ忙しいな)早川アキくんキャラ投票1位おめでとう。

 

 BASARA(1)〜(27)/田村由美
BASARA(1) (フラワーコミックス)

BASARA(1) (フラワーコミックス)

 

日本だけどファンタジー世界、未来だけど歴史ものっぽい世界設定が斬新でおもしろかった。仲間と全国行脚していくのもRPGっぽくて楽しい。キャラ数が半端なく多いのにちゃんと描き分け、設定を分けていてすごいなと思った。(描き分けを重視するあまりコテコテのキャラが生まれるでもなく笑、デザインとして成立している)オタク読みとしては、この人を推そう!と意気込んだキャラが早々に亡くなって泣いた。そして次に推したキャラも城ごと炎上した。亡くなるキャラはそこまで多くないのにこの運はなんでだ、、

ストーリーを振り返るとちょっと長かったかな、と思ってしまったのは、自分が現代のコンテンツに慣れてしまったからなんだろうなー。メインカップルの最後の形は「思い切りがいい!潔い!」と思った。このころ(少女漫画?)ならではの傾向もあるのかも。

今のコンテンツって白と黒の間のグラデーション領域が広くなっていて、それには時代背景があり決して悪いことではないのだけど、一方で創作者がフィクションにおいて明快なアンサーを出すのは難しくなってきてるように思う。『BASARA』に関係ないけれど、いまってある程度の残酷さ・つらさが下地にある作品が多いし、そのほうが受け入れられやすいですよね。手放しにハピエンを喜べない感じはあるかもなあ。 

 

正欲/朝井リョウ
正欲

正欲

 

一文、というかもはや一打一打が鈍くみぞおちに響くような感覚だった。内容には触れないけれど、濱野ちひろさん『聖なるズー』と本質的には近い部分があると思う。

これまでのメディアでの発言等を聞いていると、朝井さんは「ヒトの動物的側面と社会的側面のアンバランスさ」ないしは「誰しも必ず持っているのにないフリをされている欲求」に関心のある方だと思い、『正欲』はついにその部分に着手したのだなと覚悟を感じられた。

本著には「あなたが都合よく使っている多様性という言葉は、自分の想像力の限界を思い知らされる言葉のはずだろう」という意図の文があります。この言葉を読んだときに自分の足元が浮かぶような、どこに立っているのかわからなくなるような感覚に陥った。作家本人にとっても自罰的な一冊だったと思う。想像の鍵をもらえた。

冒頭文がかなり良いので試読リンクを貼っておく↓

www.shinchosha.co.jp

 

オリンピックの身代金/奥田英朗
オリンピックの身代金

オリンピックの身代金

  • 作者:奥田 英朗
  • 発売日: 2008/11/28
  • メディア: 単行本
 

‘64年東京オリンピック直前の日本が舞台。当時実在した連続爆弾魔の設定を下敷きにした犯罪小説です。「草加次郎事件」というのは昭和の未解決事件として有名らしかった。

www2.nhk.or.jp

当時を経験していない自分からすると、東京史としてもおもしろい読みものだった。オリンピック開催を国民が諸手を挙げて歓迎するような台詞の数々を読んでいると、やっぱり現代と比較してなんとも言い表しがたい気持ちになる。今の日本に当時のような高揚は皆無なのに、本作に描かれる地方格差や所得格差の体質だけはおそらく今となんら変わりなく、共感しやすいという皮肉。

眉目秀麗で物腰柔らかな東大院生・島崎国男と、スリの中年・村田留吉が共犯者として連帯する疑似父子・バディものとしてもすごくいい。“バディ”と聞くと警察ものを思い浮かべるけれど、犯罪者のバディでかつ社会派作品というのは新鮮。島崎が誠実な人間性はそのままにヒロポンに依存していき、いよいよ爆弾犯になっていくまでの流れがあまりに自然で滑らか。見事。島崎、警察、周辺人物たちの視点が代わるがわるスイッチしていく全体構成は、小説ならではの読み応えがあっておもしろかった。ラストの余韻がすごい。開会式の日の青空を思い浮かべながら、虚無感で呆然としてしまった。

この話は演劇に合いそうな題材だなと思った。(すぐ舞台で考えるクセ)2.5次元舞台の原作が枯渇してきているような話をたまに耳にするけど、小説原作の舞台作品ってもっと増えてもよさそうだけどなー。

www.arban-mag.com

 

家日和/奥田英朗
家日和 (集英社文庫)

家日和 (集英社文庫)

  • 作者:奥田 英朗
  • 発売日: 2010/05/20
  • メディア: 文庫
 

タイトル通り、今年みたいな連休にぴったりな一冊だった。派手なことはなにも起こらない、おとなたちの日常がさくさく読める。ネットオークションにハマって夫の趣味品を次々売りに出す専業主婦の心理がリアル。ネットの買取取引で高評価をつけてもらうと、なんか承認された感じあるよね。笑

 

 

読書記録、もう少し軽く書きたいんだけどつい長くなっちゃうな。読書といえば余談の余談で、先日の連休中に美容室に行ったんですが、そこで『ダ・ヴィンチ』を読むのを毎回楽しみにしています。声優の櫻井さんと弘中アナのエッセイ連載、おもしろくて。文筆業が本業ではない方の文章を読めたときって、なんでこんなに嬉しいんでしょうね。櫻井さんの文章はすごくリズムがよくて、音声を仕事にしている方ならではの小気味よさがクセになるのよ。

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