記憶が保てるように

主に舞台や本、映画などエンタメと日常の話

ミュージカル『ウェイトレス』 ある春の観劇

 

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3月のゆる感想。

歴史ものじゃないミュージカルで、“女の人生“をこうも正面からくらったのって初めて。妊娠、出産、結婚、DV、W不倫……女の人生のオンパレードみたいなミュージカルなので笑、経験によって感じ方は違うかもしれない。フィクションだからといってオブラートに包まない、ある種エグみのある脚本も含めて。でも、その生っぽさがあるからこそ、描き出す救いが一層輝いて見える。自分自身、あと10年後くらいに観劇したら、それはそれでまたぜんぜん違う印象を抱くかも(より味わえるかも?)しれない、なんてことも思った。

 

日常ベースの物語だけに大がかりな仕掛けはないのだけど、観客を退屈させないし飽きさせない演出、細部にエッジが効いててよかった。アンサンブルを使ったアナログで遊び心のあるモーション、メリハリのある空間の使い方、あとスマートなセットチェンジ(けっこう転換が多いのに全然ばたつき感がなくて見事!)も。いろいろと細やかな工夫があって、仕事が行き届いてるなと感心した。スタッフもそうだし、この作品は出役の人数が少ないからアンサンブルメンバーもさぞ大変なんじゃないかな。

 

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ロビーにしれっと置いてあってよかった。

主人公ジェナを演じる高畑充希さん、絶妙な世慣れ感と人生の倦怠をうまーく共存させていて、よすぎた。仕事ができるしクレバーで、仲間に優しいお姉さん。だけど、がんばりすぎるから人に見せないところでちょっと脆い。(こういう女の人って、実際にもけっこういるよね!涙)ジェナは終始本当に出ずっぱりで、歌だけ見ても彼女一人で全体の6割以上歌ってるくらいの勢いで大忙し。充希ちゃんの、柔和で感情表現に富んだ特徴的な声は、オンリーワンの持ち味という感じがするなあ。センターが似合う。

 

宮野真守さん演じる、産婦人科医ポマターもとっても良かった。ああいう……悪気なく優しい憎めない、ゆえにクズな人()も、またいるんだよな~!笑 メイン二人のキャスティングは相性もよかったのではないかと。シングルキャストなので比較しようがないけれど、高畑ジェナと宮野ポマターの絡みは、なんというかギラギラの攻め合い感が強くてわらった。ぐっちゃぐちゃの絡みシーンでパイ作りのワードを引っ張ってくるのは秀逸すぎるでしょ。あと、おばたのお兄さんが飛び道具的な立ち位置を見事に演じきっていて拍手! 全シーン通しても、客席が一番わかりやすく盛り上がっていたのはお兄さんのシーンだったんじゃと思うくらい。(これまでもミュージカル出てたのかな?)これからもコメディもの出てほしいな~。

 

コミカルでキュートな宮澤エマちゃんのドーンも、ミュージカルが初めてとは思えないLiLiCoさんのベッキーも、ほんと最高の同僚。夫の不倫を「そんなことくらいじゃ離婚なんてしないわよ」と一蹴するベッキー、別れれば?とつつかれながらも、離婚せず子供は産むと決めていたジェナ。この作品の女たちが逞しくて、いじらしくて。なんか、「なるようにしかならない」って言葉はマイナスな意味じゃなくて、結局「なるようになる」ということなんだよな~と思った。と、ファミレスの会話みたいな感想。笑 昨今多用されがちだけど、ジェナ、ドーン、ベッキーの女同僚3人の、ほどよいドライさと同志感にシスターフッドを感じた。

  

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久しぶりの日生に喜びの舞すぎて劇場ブロマ購入

 

ウェイトレスの宣伝でキャスト3人が出ていたフジ『ボクらの時代』も観た。充希ちゃんが番組で話していた「劇場まで足を運んでくれる層は固定化されていて、もっと間口を広げなければ業界が衰退してしまうかも」という危機感、舞台を愛する人たち(作り手・観客問わず)からすると暗黙の共通認識だなと思った。続いて「自分がTVに出ることで、劇場に新しい層を呼び込みたい」というようなことも語っていたんだけど、まさに今回、自分がウェイトレスの話をついったーに書いたり会った人に話したりしていたら、舞台オタクではない友人たちからチラホラいいな、行きたいと反応があって。ビジョンを実現していてかっこいいなと思った。自分がいま舞台に返せるものってなんだろ、ということを最近よく考える。 

 

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この日、日比谷公園の桜が満開だった〜

 

 

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日生劇場、大好きなんだ〜。劇場としても建築としても。1階の壁のモザイク、上にいくにつれすぼまっていく柱の造形、劇場扉のクリアな取っ手の曲線美、葡萄を模した照明、天井のあこや貝。次いつ来られるかわからないから、ロビーでたくさん写真撮ってしまった。笑 

 

また緊急事態宣言が出てしまいましたね。現場主義の仲間たちを幸せにしたいよ~!