記憶が保てるように

主に舞台や本、映画などエンタメと日常の話

最近読んだ本/2020.7-8

 

最近読んだ本を片っ端からメモしておきたいんだけど、もはや記憶が曖昧なのでとりあえずぱっと思い出せた本だけピックアップ。思い出したらまた書こう。 

 

その手を握りたい/柚木麻子

その手をにぎりたい (小学館文庫)

その手をにぎりたい (小学館文庫)

 

柚木さん好きの友人に薦められて。高級寿司店の常連客女性と、若手寿司職人の関係性を描いているのだが、読む前と読み終わったあとでタイトルが粋!と二度思う。柚木さんの書く女は自己陶酔成分がなく、カラッとしていて好感がもてる。小説の主人公って「陰」に寄りがちだけど、柚木さんは苦悩を乗り越える「陽」を書く人ですよね。シズル感あふれる生寿司の描写にうっとりし、読了した日にまんまと寿司を食べに行った! 名店を構成する要素としての「客層」、店側ですべてコントロールできるものではないから難しいですね。アイドルとオタクの関係性に似ているなと思った。

 

ままならないから私とあなた/朝井リョウ

ままならないから私とあなた (文春文庫)
 

朝井リョウ作品を読んでいると、この人物は刺す方か?刺される方か?を考えながら読んでしまう。笑(朝井さんが“刺す”ときは刺されることも覚悟しているように見える)その論理でいうと、本作収録の短編『レンタル彼氏』の「相手に自分のすべてをさらけ出すことで互いの信頼値を高める」タイプの“ラグビー部”は、「あ~これは、、(察し)」となるしかない。笑 「善意の暴力性」って共感性の高いテーマだよな。そしてメインの『ままならないから私とあなた』ね。合理性を突き詰めると成り立たなくなる事柄って世の中にけっこうある。時代の変遷とともに淘汰されていく仕事もそうだし。薫のロジックも別に間違ってないし筋が通っているから難しい。合理性と人の心って二元論では語れない。

 

オレがマリオ/俵万智

オレがマリオ (文春文庫)

オレがマリオ (文春文庫)

  • 作者:万智, 俵
  • 発売日: 2017/08/04
  • メディア: 文庫
 

3.11が起き、息子を連れて仙台から石垣島へ移住した頃の俵さんの歌集。息子さんがまだ幼い頃の歌、子どもの視点は気づきの宝庫だなと、子どもを育てたことないのに疑似体験する心地。俵さんの歌はいずれも「わたしも短歌書いてみたい」と思わせるからすごい。ひとつの歌でも楽しいし、章のまとまりを続けて読むことで浮かぶ景色もあるからより楽しい。表題の元になっている下記の歌は、うん。意識していないのにもう自然と暗唱できてしまうな。

「オレが今マリオなんだよ」島に来て子はゲーム機に触れなくなりぬ

 

脳内ポイズンベリー(1)~(5)/水城せとな

映画窮鼠のことを書いたばかりですが。水城せとな作品はメディアミックスを除くと初めて読んだのが「窮鼠~」、次いで「世界で一番、俺が〇〇」で、これはもっと知っていかねばらないな……と思っています。脳内ポイズンベリー、もっとコメディ寄りかと思っていたらパートナー間の才能の話だった。一見キラキラ系なキャラクターのイタさやだささが生々しく描かれていて、なぜかホッとしてしまうのが水城作品。じっさい、どんなに涼しい顔して生きてるように見えてもイタくない人間なんていないんだろう。読んだ後、自分の脳内会議に耳を澄ませたくなる。

 

春風のエトランゼ(4)、queue/紀伊カンナ

queue -Kanna Kii artbook- (単行本)

queue -Kanna Kii artbook- (単行本)

 

 久しぶりのエトランゼ新刊と、同時発売のアートブックを購入。画集というものを久しぶりに買った……。紀伊カンナ先生の絵はほんっとうに人を幸せにするよ~。人の表情が変わるときの一瞬の「跳ね」(会話相手の言葉を受けて「えっ?!」て顔に変わるときの感じ)を、平面の静止画で表現してしまうのがすごい。アニメーション出身の方の職能なのだろうか。「キャラクターがうまい人」「背景がうまい人」はそれぞれいるけど、紀伊カンナ先生の場合はどっちもめっちゃうまいから稀有な方だよなあ。風景の絵から、季節だけじゃなく風の速さや温度まで漂ってくる。

 

こころ/夏目漱石

こころ

こころ

 

 読書というより、正確には全編朗読してくれてる動画をYoutubeで聴いた。基本デスクワークだから、平日の夜はどうしても目が疲れてしまってあまり家で読書する気にならないんだけど、音声なら料理しながらとかストレッチしながらでも聴けるからすごくいい。著作権切れの本だから安心して聴けるしね。「こころ」実は初めて全文通しで触れたけど、「わかりやすく、かつ考察の余地がある」というのは名作の条件だなーと個人的に思う。「こころ」なんて特に色んな考察があると思うけど、いつの時代も考察オタクがいる。。。と思うと元気もらえる。考察オタクが元気な界隈は沼の粘度が高い。いいこと。夏目漱石の文体ってこんなに現代小説に近いんだなーってびっくり。別作品だけど『三四郎』とかも、突っ込みどころありまくりでおもしろかった。「初対面の上品なイイ女と二人きりで宿に泊まったけど手のひとつも出せなくて、「つまらん男ね」と言い捨てられ、田舎者の三四郎「まじ女ってわからん。。」となる場面、さすがに笑った。最近は宮沢賢治作品もちょこちょこ聴いているところです。

 

風の谷のナウシカ(1)~(7)/宮崎駿

風の谷のナウシカ 1 (アニメージュコミックスワイド判)

風の谷のナウシカ 1 (アニメージュコミックスワイド判)

  • 作者:宮崎 駿
  • 発売日: 1983/07/20
  • メディア: コミック
 

 ナウシカ原作は読むのにすごく時間がかかった……。正直映画の5万倍難解だったし、わたしが映画で観てきたジブリ作品の数々は、宮崎駿成分のほんのひと握りだったんだな、、という感じ。はやお、ペンと尺があればこんなに作家性が爆発するんだ!っていう。笑 ちょっと一読しただけでは理解するに足りない。。今年映画館で観たときにも、一人で背負っているナウシカと彼女に向けられる期待の圧がしんどいなと思ったんだけど、漫画だとより彼女が聖母化していてなかなか苦しいですね。そしてこれは現在の自分が観たからそう思うのであって、かといって昔の作品の見方がもう戻ることもないだろうな。単純に良し悪しでは言えないけれど。

 

シュナの旅宮崎駿

シュナの旅 (アニメージュ文庫)

シュナの旅 (アニメージュ文庫)

  • 作者:宮崎 駿
  • 発売日: 1983/06/15
  • メディア: 文庫
 

ナウシカに続いて読んだ『シュナの旅』は文庫サイズの小さな漫画。ナウシカもののけ姫よりははるかに児童向けに描かれていて、絵本に近い印象。風の谷っぽい谷が出てきたり、ゲド戦記のアレンとテルーのような人身売買ボーイミーツガール(?)があったり、ヤックルが登場したり、ヒドラ(漫画のナウシカに出てくる、サボテンとベイマックスのハイブリッドみたいな巨人)の原型らしきものが出てきたり、しまいには主人公が神隠しのような状況に陥ったり、知ってるさまざまな要素が混じってる。駿さんはやっぱりファンタジーにホラー要素を取り入れるのがうまい。ジブリ作品は男女が明確に結ばれるエンドは意外と少ない気がするんだけど、これはきれいに大団円を描いていて珍しい。