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舞台文豪ストレイドッグスがおもしろいぞ

 

2017年、最後に見た舞台が「文豪ストレイドッグス」でした。

 

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(文ストの舞台、横浜の夜景)

 

文ステの演出はギャグとシリアス、スタイリッシュとおばかっぽさ、抽象と具現とか、対極にある色んな要素のバランスが取れていてすばらしかった。

特に、文ステの要である「異能力」の表現において、映像とアナログのバランスが絶妙だった。2.5における戦闘シーンって、どうしても映像を多用しがちなイメージがあるんだけど、文ステは映像をうまく使いながらもそこ頼みにせず「映像以外でもどう表現するか」っていう点に工夫が凝らされていて楽しかったな。あるときにはアンアンブルで、またあるときには道具で、バリエーション豊かに魅せてくれてわくわくした。

 

ゲネプロ映像

http:// https://www.youtube.com/watch?v=x3Nelz6M-Zs

 (舞台がすっきりしていて視覚的に情報が整理されているから、とにかく見やすくてストレスフリー。だからこそ異能力もよく映える)

 

そしてこれだけは言いたい。OPの爽快感が半端ない。

アニメ1期で使われている「GRANRODEOTRASH CANDY」が舞台でも使われているんだけど、これがも~~~~興奮でした……。2.5次元舞台の醍醐味を感じた。

当たり前なんだけどOPでのキャラクター一人一人の持ち時間ってほんの数秒で、それでもその数秒の中にキャラクターの歩く速さ、振り返る仕草、キメに持っていくまでの表情とか、無数の表現が詰まってる。OPは、たった数秒の中にある何百通りもの選択肢から一つを選び取った役者が「このキャラクターをこう表現する」って宣言する意思表明のように思えて熱い。OPのキメを見ると、役者ってすごいなあああと新鮮に感動してしまう、あまりに格好よくて。

 

そんな文ステに総じて言えるのが、どこを切り取っても世界観が徹底されているっていうこと。本編の細かい演出はもちろん、終幕後のカーテンコールまで徹底されていた。千穐楽の挨拶はキャストとしてではなく役として、一人一人の言葉が聞けたのが新鮮でうれしかった。カテコって舞台の”質”が出るところだと思うんです。キャスト全員が挨拶するカテコで、なおかつ人数が多い場合は、ときに進行がグダってしまったり着地点が見えなくなってしまったり……ということもありがちだと思うんだけど、文ステはま~~スマートで……。

一人一人の尺は比較的短め。乱歩さんの進行のもとテンポよく進み、これまでの公演と変わらず(乱歩さんが最後に一人だけ出て来てちょっと締めのご挨拶をする)終わります。文ステは前説も乱歩さんが担当しているから、舞台の始めと終わりを一貫して彼がまとめているんですよね。盛り上がってカテコが何回にも及ぶ舞台ももちろん楽しいしうれしいんだけど、文ステの、まるでカテコまでも本編というようなシナリオの美しさに、作品の色が見えた気がしました。作り手の「意志」が行き届いた作品は、観ていて気持ちが良い。なんというかすごく几帳面な人の仕事だなと思った、色んなところで。中屋敷さんの目が細やかなのかな。

 

あと細かいけど個人的に中也登場の演出が好きだったな~。前の場面で暗転して、流れていた音楽が突然ブレイク。照明と音響が同時に入って、ピンスポがセンターの中也を照らすところ。最高にきまっててテンション上がった。他にも、EDのBGM、太宰のターンに合わせて音楽ブレイクするのがとんでもなくお洒落だとか、同じくED、探偵社のBGMが3拍子でお洒落な雰囲気なんだけど、次に出てくるポートマフィアはヘビーな4拍子なのがギャップ大きくてかっこいいだとか、最後のキメで探偵社とポートマフィアに赤青の対照的な照明が差すところが最高すぎるとか、あげればきりがないです。。。

 

ここからは印象に残ったキャストの話を。

 

鳥越裕貴(中島敦

刀ミュの幕末天狼傳のときにもそうだったんだけど、鳥ちゃんの芝居には泣かされてしまった…。鳥ちゃんの演じるキャラクターの感情が、芝居を通じて見てる側にも同じように響いてくる。終盤の芥川(祥平くん)との対峙の場面。

「人は誰かに生きていいよって言われなくちゃ生きていけないんだ。そんな簡単なことが何故分からないんだ」

たっぷりと文ステの世界観に浸って、終盤に聞くこの台詞はぐっと胸にくる。

 

多和田秀弥(太宰治

多和田くんの太宰の声、アニメ太宰(cv.宮野真守)に似ていて驚いた。たわちゃんがどんな役作りをするタイプか知らないけど、演技で似せるってこういうことなんだと思った。地声が似てるわけじゃないのに、声のニュアンスがアニメとすごくダブったんだよね。役柄的にギャグパートも多かったけど、アニメ的なポップな仕草からシリアスな演技までスマートに演じ分けてて、うわぁうまいな……って何度も何度も思った。引き出しが豊富。客席が引くほどの振り切ったボケが最高すぎた。笑

 

橋本祥平(芥川龍之介

2次元で見る芥川の表情を3次元で再現するとこうなるんだっていう、目ん玉ひん剥いたガチギレの表情がよかった。また芥川というキャラクターがね、たまらない。感情のないラスボスかと思いきや、蓋を開けてみると一番人間くさくてすごく不器用で好きになった。芥川みたいな敵キャラってクールながら怖さを感じさせる説得力もないといけない、難しい役だなあと。まだ公演期間が始まったばかりのKAATで見たときに比べて、千穐楽では狂気の度合いが増したような印象。 

 

長江峻行(江戸川乱歩

文ステは前説と後説を長江くん演じる乱歩さんが担当しているんだけど、客席とキャッチボールしつつ確実に会場をあっためてハケていく職人っぷりに惚れた。頼れる男だ……。さらにすごいなぁと思ったのが東京千穐楽のカーテンコール。乱歩さんの司会が本当にお上手で。実際、あれだけの尺のカテコを役でやるってことは、ほとんど本編みたいなものだと思うんだけど(しかもこれまでの公演でやってないわけで)、キャストとアンサンブル一人一人のフルネームを誰一人詰まることなく、時には客席の空気を読んでツッコミを入れてみたり、気のきいた受けのコメントを入れたり……。頭の回転が速いし、落ち着いてる。本編での芝居も安定感があって、カンパニー最年少で10代って知ったとき驚いた。きもが座ってるなぁ~。人生3回目なのかな。。

 

植田圭輔中原中也

上にも少し演出のことを書いたけど、初めて文ステを見たとき中也の登場シーンで会場の空気が揺れるのを感じて動揺した。笑 あの瞬間、客席の温度が確実に上がってた。(公演3日目だったのもあるかもしれないけど、公演序盤に見るとこういう楽しさがあるからうれしい)黄色い歓声をかっさらってハケていくのが様式美みたいになっててジワる。冷静に考えると出ている時間は短かったと思うんだけど、爪痕の残し方がスゴイ。

 

輝馬(国木田独歩

元々原作を読んだときにかっこいい…!と思ったのが国木田でした。ステ国木田独歩もリア恋枠感が強い。マブい。ステ国木田で原作のエピソードが見られたら間違いなく恋してしまう。衣装のベストが胴の筋肉の厚みで割ときつそうなのが最高だった。コミカルな芝居がキュート。太宰とのコント、一生見ていられる。

 

あとね女性キャスト陣がまたすばらしくて…!今村美歩ちゃんも桑江咲菜ちゃんも平田裕香さんも齋藤明里ちゃんも美人なのはもちろんのこと声が良すぎる。特に平田裕香さんの声が好きすぎてもうそれだけで好きになってしまう。そして皆どこはかとなくエロい。ナオミちゃんが兄様に股ドンするところ、敦と鏡花ちゃんのダンス(鏡花ちゃんがぱきぱき踊りながらも終始真顔なのがすごくキュート)が文ステの楽しみの一つだった。

 

お話について

舞台を見ることになって付け焼き刃で勉強した程度だったんだけど、しっかりはまってしまった。太宰に対して「生きる価値」を求める芥川が、部下の鏡花に生きる価値を与えようと人殺しの道具としての役割を押し付けた結果、鏡花には拒否されて憧れた太宰にも「僕の部下(中島敦)の方が君よりよっぽど優秀」って言われ、恨みの対象の中島敦には説教される芥川が不憫すぎて愛しかった。。